オーディオのついでに見たヨーロッパの野菜など(1.トリアの直売テント)

2013年 小林 正信

※この記事は株式会社産直新聞社が発行する「産直コペル」に連載したものです。

 わたしは産直新聞社の大家で、キャリコという小さなIT会社を経営している。わたしの会社の2階が産直新聞の編集室という間柄だ。8月に独仏のオーディオ仲間を訪ねる旅をしたついでに、ちょっとだけ野菜などについて見聞きしたことを寄稿させていただく。

トリアの直売テント


 旅の第一の目的はナチスドイツがプロパガンダ用に作らせたという、横幅3.5メートルもある巨大なスピーカーを入手することであった。そのスピーカーの所有者はドイツ西部のモーゼル河畔にある田舎町に住んでいて、近くにローマ時代の遺跡で有名なトリアという町があるので訪れてみた。ちょうどその地域はバンクホリデーと呼ばれる休日から週末にかけての連休中で、大通りには数多くの見世物や農産物を売るテントなどが市場のように並んでいた。人出も大変なもので、大いに賑わっていた。
 同行したスピーカーの所有者によれば、「テントの野菜や果物は近隣の農家が育てたもので、スーパーマーケットにあるものよりも高価で2倍くらいするが、安全で品質が高いので人気がある」とのことだ。実際、見ているうちにどんどん売れていた。ヨーロッパでは野菜や果物はスーパーマーケットでも袋詰めになっておらずバラ売りされているので、直売テントでは当然バラ売りされている。自分が長野県に住んでいて地元の安い野菜を主に食べているせいか、野菜の価格はスーパーの2倍というのが納得特できるくらい高く感じたが、果物は日本よりも安かった。

トリアの大通りにあった野菜や果物の直売テント
トリアの大通りにあった野菜や果物の直売テント

 ドイツの消費税(正確には付加価値税)は原則19%だが、一部の嗜好品などを除く食品は7%なので、野菜や果物は税率7%だ。もし、日本の消費税が10%に値上げされると、ほとんどの農産物の消費税は日本のほうが高くなってしまう。財政難で消費税率が原則21%と高いイタリアは意外に安くて4%(ただし肉と魚は10%)、高福祉国で税率25%のスウェーデンですら6%だから、農産物の消費税が10%というのは世界でも特別に高い税金といえる。年貢におびえる時代が再来しそうな日本だが、ヨーロッパでは消費税が上昇するにつれて物々交換が盛んになりつつあるのだそうで、小規模な地産池消の農業にはヒントになるかもしれない。

トリアにあるドイツ最古の教会の内部で、天井ドームのレリーフが見事だった
トリアにあるドイツ最古の教会の内部で、天井ドームのレリーフが見事だった

 トリアを訪れる観光客はほとんどがドイツ人で、マクドナルドでも英語は通じにくく、「ツー・コーク」と言った後で「ツヴァイ・コーラ」と言い直すような具合だった。ドイツ最古の見事な教会もある有名な観光地なので、日本人も少しはいるだろうと予想していたが、それとおぼしき人には出会わなかった。現在のヨーロッパでは、かつての日本人団体旅行客のように中国人観光客が幅を利かせているが、ここではアジア系の観光客をわずかしか見かけなかった。ドイツ人観光客も年齢層が比較的高いようで、やや渋めの観光地といったところかもしれない。そのせいか、産直のテントの客も年配者が多かったが、売り子は若者から中年までの女性が多く、そうなると若い女性が目立っていて、看板もカラフルでセンスが良い。ちょっとほの暗かったりする素朴な日本の産直とは、ずいぶんな見栄えの落差を感じた。

客は年配者が多かったが、売り子は若い女性が目立った
客は年配者が多かったが、売り子は若い女性が目立った

 野菜はおおむね日本にあるものと同じだが、不揃いで太いキューリを除けば長野で日常的に目にしている日本の野菜よりも魅力的で、ナスやパプリカは芸術品のように美しかった。ひとつだけ、じつに奇妙な野菜があった。葉っぱはセロリとミツバの中間のようで、地下茎は蕪のようでいて無数の捻じ曲がった根がついている。いったいどうやって食べるのか想像もできない野菜だが、読者にきっとご存知の方がいらっしゃるだろうから、ぜひ、教えていただきたい。果物ではイチゴが露地物ばかりで小さいのと、サクランボがアメリカンチェリーと佐藤錦の中間のような色とサイズで、どちらも安く売られているのが日本との大きな違いだった。トリアで買ったものではないが、ホテルで食べた同様なイチゴとサクランボは、味が濃くてとてもおいしいかった。

見たことのない奇妙な野菜。現地では比較的ポピュラーなようだ
見たことのない奇妙な野菜。現地では比較的ポピュラーなようだ